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ターコイズ

 宝石の内「ターコイズ」について、組成・特徴・歴史・産地などを写真や動画を交えて解説します。

ターコイズの組成

ターコイズの外観写真
  • 分類:リン酸塩鉱物
  • 組成:CuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O
  • 結晶系:三斜晶系
  • 色:青-緑
  • 光沢:ガラス(ロウ)光沢
  • モース硬度:5.5-6
  • 比重:2.6-2.9
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ターコイズの特徴

 ターコイズ(和名はトルコ石-トルコいし)は青色から緑色の色を持つリン酸塩鉱物の一種です。12月の誕生石に指定されています。
 銅やアルミニウムを含むリン酸塩の岩石に水が作用したときに生成され、銅を含むと青色に発色し、鉄を含む(もしくは脱水する)と緑に発色します。
 ターコイズ(トルコ石)の歴史は古く、古代エジプト、アステカ、ペルシア、メソポタミア、インダス渓谷、殷王朝以来の古代中国において珍重されてきました。
 英語では「turquoise」(ターコイズ)と言いますが、これはフランス語の「pierre turquoise」(ピエール・チュルクワーズ=トルコの石)に由来しています。古フランス語で「トルコの」を表す形容詞だった「turquoise」と言う語が、時代の変遷と共に「青色の石」を表すようになったようです。ちなみに、紀元1世紀に古代ローマで活躍した博物学者・大プリニウスはこの宝石のことを「callais」と呼び、南米アステカ人は「chalchihuitl」と呼ぶなど、ターコイズには多くの別称があります。

ターコイズの模造

 ターコイズは古い歴史を持つ宝石ですが、それに合わせて模造の歴史にも古いものがあります。
 古代エジプトでは早くもターコイズの模造が行われており、土器に光沢薬を塗ったものや、ガラスやエナメル加工を施したものが発見されています。現代においてはセラミック、陶磁器、プラスチックなどが利用され、「Viennese turquoise」(ウィーン・ターコイズ)や「neolith」(直訳すると”新石器”)などが有名です。前者はリン酸アルミニウムをオレイン酸銅で着色したもので、後者はベイアライトとリン酸銅の混合物です。
 今日最も出くわす確率の高い模造品は、本来白色のハウライト(howlite)やマグネサイト(magnesite)を着色したものです。
 天然のターコイズの一般的な特徴は、均一で薄いブルーの地色に、白っぽいしみや斑点がちりばめられているという点です。一方模造品は、色の濃さや透明度が不自然だったり、表面直下に泡や液体を流し込んだ痕跡などが見て取れるため、熟練した鑑定士が拡大して観察すれば、比較的容易に鑑別することができます。

ターコイズの人工処理

 他の宝石同様、ターコイズも色合いや色の持続性を向上させるため、人工処理を受けることがしばしばあります。
ターコイズに施される処理いろいろ
  • ワックスがけ/オイル浸潤  「ワックスがけ」(waxing)と「オイル浸潤」(oiling)は一般的な処理方法で、表面に湿ったような質感を与えることができ、宝石の宝石の美観を向上させます。しかし、熱や日光に長時間さらすと、ワックスやオイルが溶け出して、通称「汗」と呼ばれるカスのような物が出てきたりします。
  • スタビライゼーション  「スタビライゼーション」(stabilization)は、エポキシ樹脂やプラスチック、もしくは水ガラス(ケイ酸ソーダの水溶液)を用いてターコイズの表面にウエットな質感を与える方法です。ワックスがけやオイル浸潤に比較すると、はるかに長持ちする処理方法ですが、自然の状態に対する加工の度合いが大きすぎるため、あまり好まない人もいます。
  • 着色  「着色」(dyeing)には主としてペルシアンブルーという着色料を用いますが、色合いを人工的に全く変えてしまうため、天然状態の鉱物を好むピュアリストたちの中には、「詐欺だ」と言う人までいます。
  • バッキング  「バッキング」(backing)とは、頑丈な土台の上にターコイズを固定することを言います。特に薄く切り出したターコイズは構造的にもろいため、こうした土台をつけることはちょうど「補強工事」に相当すると言ってよいでしょう。
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ターコイズの産地

 ターコイズの産地はイラン、シナイ半島、アメリカなどです。イランはかつて「ペルシア」と呼ばれ、およそ2,000年にわたってターコイズを供給し続けてきました。
 シナイ半島は紀元前3000年頃からターコイズを産出し、おそらくエジプト王朝によって管理されていた時代もあると推察されています。現在でも6つの鉱山が稼働中で、中でも「Serabit el-Khadim」と「Wadi Maghareh」は、現存する中で最も古い歴史を持つ鉱山です。大規模採掘は採算が取れないため、現地の人々が冬季の間、自作の火薬を用いて細々と採掘しているそうです。
 シナイ半島で採れるターコイズは、イラン産のものより緑が濃く、また色に持続性がある(=色あせにくい)という特徴があります。時に「エジプシャン・ターコイズ」(Egyptian Turquoise)とも呼ばれ、ターコイズの中では最も透明度が高く、 また拡大してみると表面に濃い青色をした円盤状の構造が、まるでコショウを振りかけたような状態で確認することができます。
 アメリカのアリゾナ州、カリフォルニア州、コロラド州、ニューメキシコ州、ネバダ州も、ターコイズの主産地として挙げられます。カリフォルニアとニューメキシコの堆積層は、コロンビアが誕生する前の先住民たちによって採掘された痕跡も見られます。
 カリフォルニア産のターコイズはややグレードが下で、やや粉っぽい質感から「チョーク・ターコイズ」とも呼ばれることがあります。鉄分を多く含み、緑と黄色が強く出過ぎるため、人工処理なしでは宝飾品には加工できないことが多いようです。
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ターコイズの歴史

 ターコイズはその美しいパステルカラーで、古代エジプト、アステカ文明、メソアメリカン、ペルシア、 メソポタミア文明、インダス文明、そして中国などで珍重されました。
 極めて古い歴史を有しているにもかかわらず、西洋において人気が出たのは、ようやく14世紀に入ってからです。こうした文明間で共通している信仰は、 「ターコイズが装着者の体調に合わせて色を変化させ、身を守ってくれる」、というものです。
ツタンカーメン王の仮面  アステカ文明においては、ターコイズをクリスタルマラカイトジェットジェードなどと一緒にマスクやナイフ、盾などにはめこみ、ちょうどモザイク画のような装飾品を作りました。
 ペルシア(現イラン)においては1,000年以上にわたり、事実上ターコイズが国石扱いだったようで、モスクを始めとする重要な建築物の内外には、必ずといって良いほどターコイズが用いられています。その影響はインドにも及び、タージマハルで金やルビー、ダイヤモンドと共にターコイズの装飾が見られるのは、その最たる例と言えるでしょう。
 エジプトにおけるターコイズの歴史は更に古く、第一王朝かそれ以前にまで遡ることができます。最も有名な例としては、ツタンカーメンの墓から発見された仮面です。「ツタンカーメン=黄金」という印象が強いですが、実はの他にもターコイズ、ラピスラズリカーネリアンなどがはめ込み細工として施されています。エジプトにおいてターコイズが愛好されていたのは、この宝石に女神ハトホル(Hathor)が関連付けられていた、という背景があるようです。
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ターコイズの評価と手入れ

 ターコイズの二大基準は、「硬さ」と「色の充実度」です。
ターコイズの理想とされる「コマドリの卵色」(robin's egg)  色に関しては、個人の好みの問題を度外視すると、「コマドリの卵色」(robin's egg)が最も好ましいといわれます。また、「硬さ」が余りにも不十分だと、色あせの原因になりますので、宝石としては不向きであると判断されます。地域によって評価は分かれるものの、ターコイズ表面に「スパイダーウェブ・マトリクス」(spiderweb matrix)と呼ばれる、ちょうどクモの巣を張ったような脈模様も時に評価基準となります。色の均一性や、職人の仕上げ具合(研磨・左右均等性など)も、当然評価基準のひとつです。
 リン酸鉱物であるターコイズは香水、日焼け止めクリーム、ヘアスプレーや他の化粧品、皮脂、宝石用クリーニング剤、日光への長時間の露出に対する脆弱性を持っています。こうしたものとの接触を避けるのが、ターコイズをケアする際の最重要項目です。
 装着が終わった後は、柔らかい布などで表面の汚れを軽く拭き落とし、また他の宝石などと接触しないよう、専用のボックスに入れるようにすると長持ちします。
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ターコイズの動画

 以下でご紹介するのは、アメリカ・アリゾナ州・ビズビー(Besbee)でとれたターコイズの動画です。
元動画は⇒こちら
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