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ダイヤモンド

 宝石の内「ダイヤモンド」について、組成・特徴・歴史・産地などを写真や動画を交えて解説します。

ダイヤモンドの組成

ダイヤモンドの外観写真
  • 分類:元素鉱物
  • 組成:C
  • 結晶系:等軸晶系
  • 色:無色-黒
  • 光沢:金剛光沢
  • モース硬度:10
  • 比重:3.52
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ダイヤモンドの特徴

 以下では、ダイヤモンドの「語源と歴史」、「産地と流通」について解説します。

ダイヤモンドの語源と歴史

 「ダイヤモンド」という名前は、古代ギリシア語の「adamas」(征服できない、懐かない、壊せない)に由来しています。
 ダイヤモンドに関する最も古い記述はインドの文献に散見され、紀元前3世紀頃のサンスクリット文書である「アルタ・シャースートラ」(Arthashastra/実理論)には早くもインドにおけるダイヤモンド交易に関する文章が見られます。こうしたことから、インドにおいては少なくとも3000年前からダイヤモンドの存在が知られていたと推測されていますが、インドのペンナー川、クリシュナ川、ゴダバリ川に沿って豊富に存在する砂鉱床が、ダイヤモンドの早い発見につながったと考えられます。
 ダイヤモンドはインドから中国、あるいはローマに至るまで流通しました。インドにおける採掘量が枯渇し始めると、新たな鉱脈を求める探索の旅が始まります。結果としてブラジル(1725年)や南アフリカ(1867年・キンバリー)で新たなダイヤモンド鉱脈が発見され、中でも南アフリカはほどなくしてダイヤモンド供給の世界的中心地となりました。
 ダイヤモンドはエンゲージリングとして有名ですが、これは20世紀の初期から中期にかけて、ジュエリーメーカーであるデビアス(DeBeers)が、大々的な広告キャンペーンを行ったことが契機となっています。

ダイヤモンドの産地と流通

 ダイヤモンドは年間26,000kg(130,000,000カラット)採掘され、また人工ダイヤモンドに関しては、年間100,000kgも合成されています。
 ダイアモンドの産地は、産出量の多い順にロシア、ボツワナ、コンゴ、オーストラリア、南アフリカ、カナダ、アンゴラ、ナミビア、中国、ガーナなどで、上位6カ国で世界シェアの90%を占めています。
 2003年時点で、世界中で流通するダイヤモンドのおよそ92%は、インドのスーラト(Surat)においてカッティング、および研磨されています。また、ダイヤモンドの原石の85%、カッティングされたダイヤモンドの50%、そして工業用ダイヤモンドの40%が、ベルギーのアントワープで取引されており、名実共にここがダイヤモンドの中心地といってよいでしょう。
 アントワープとダイヤモンドとのかかわりは15世紀にまで遡りますが、それは高度なダイヤモンドカッターを考案したことが契機になっています。
 またアメリカ・ニューヨークもダイヤモンド流通の重要な拠点であり、オークションや小売を含めると、世界中に存在する宝石ダイヤのおよそ80%がここで取引されています。
 ダイヤモンドの流通に極めて大きな影響力を持っているのが、「DeBeers」社です。1888年の創業以来、世界におけるダイヤモンド流通を牛耳ってきたといっても過言ではありません。DeBeersの子会社である「The Diamond Trading Company」(DTC)は、DeBeersが管理しているダイヤモンド鉱山(世界中で産出されるダイヤモンドの約40%を占めるとも)から採掘されたダイヤの原石を流通しています。20世紀を通じてみると、およそ80%のダイヤモンドが、何らかの形でDeBeersを通過したとも言われています。
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鉱物としてのダイヤモンド

 以下では、「生成」、「構造」、「硬度」など、鉱物としてのダイヤモンドに着目して解説します。

ダイヤモンドの生成

 天然ダイヤモンドの多くは、地殻深く140~190km辺りの高温高圧環境(45~60 kilobars/900~1300度)において生成されます。炭素を含んだ鉱物がダイヤモンドの原料となり、10億年~33億年という気の遠くなるような時間をかけて結晶化します。
 結晶化したダイヤモンドは、火山活動によるマグマに乗って地表近くまで移動し、冷却後は「キンバーライト」(kimberlite)や「ランプロアイト」(lamproite)と呼ばれる火成岩の中にとどまります。この火成岩を探し当てることで、ダイヤモンドが採掘されるのです。
 なお、人工ダイヤモンドは、地球内部の高温高圧環境を再現することで作り出すことが出来ます。また、隕石の衝突があったと考えられるクレーター跡において、マイクロダイヤモンド(microdiamond=大きさがミクロン単位=1000分の1ミリ)、およびナノダイヤモンド(nanodiamond=大きさがナノ単位のダイヤモンド=10万分の1ミリ)と呼ばれる微小なダイヤモンドが発見されています。これらは、ダイヤモンド生成に不可欠な高温高圧環境が、隕石の衝突によって一時的に地表近くで再現されたために作られたものだと推測されています。
 ダイヤモンドの模造品は「ダイヤモンド・シミュラント」(diamond simulant)とも呼ばれますが、代表的なものは「キュービックジルコニア」(cubic zirconia)、および「モアッサナイト」(moissanite)です。
 また、故人や他界したペットの遺灰の中から抽出した炭素を元に、人工のダイヤモンドを作ってくれる会社が存在します。これらのダイヤモンドは「メモリアル・ダイヤモンド」と呼ばれ、色や大きさ、カットの仕方などに応じて価格が決まっており、顧客の要望どおりにカスタマイズできるようです。 ライフジェム・ジャパン アルゴタンザ・ジャパン

ダイヤモンドの構造

ダイヤモンドの結晶構造  ダイヤモンド(和名は金剛石-こんごうせき) は、炭素 (C) の同素体(同じ元素から構成されるが、結晶構造や結合様式が異なる単体同士の関係)の1つであり、天然で最も硬い物質です。同じく炭素の結晶でも、結合様式が変わるだけで「鉛筆の芯」(グラファイト)という非常に身近な物に変わります。
 ダイヤモンドの石言葉は「永遠の絆・純潔」で、4月の誕生石です。
 ダイヤモンドの結晶構造は、ほとんどが8面体ですが、12面体や6面体もあり、電気を通さず、宝石や研磨剤として利用されます。
 なお大きさで有名なダイヤモンドに関しては有名なダイヤモンド一覧表をご参照下さい。

ダイヤモンドの硬度

 ダイヤモンドは、自然界に存在する物質の中で最も硬く、モース硬度10を誇っています。これは、ダイヤモンドに引っかき傷を付けることができる物質が、天然界には存在しないことを意味しています。
 エンゲージリングやウェディングリングなど、日常的に身に着ける指輪にダイヤモンドが好まれるのは、その美しさのみならず「多少ぶつけても傷つかない」というダイヤモンドの固さに理由があるのです。
 ダイヤモンドよりも硬い物質は自然界には存在しませんが、人工物の中には「ハイパーダイヤモンド」など、通常のダイヤモンドの3倍近い硬度をもつ物質もあります。詳細は宝石の硬度をご参照下さい。
 ダイヤモンドの中でも最も硬いものは、オーストラリア・ニューサウスウェールズのコープトン&ビンガラ採掘場で採れるダイヤモンドです。大きさはおおむね小粒ですが、完璧に近い正八面体を有しており、また不純物も少ないため、他のダイヤモンドよりも幾分か硬く、その性質を利用してダイヤモンドを研磨するさいの「砥石」として利用されます。
 上記した通り、ダイヤモンドは非常に固い物質として知られていますが、実は瞬間的な衝撃には弱いため、 何かに強くぶつけてしまうと粉々に砕けてしまう可能性があります。この性質を逆に利用し、あえて強い衝撃を与えてダイヤモンドを割り、細かいカットの前の荒削りを行うこともあります。
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宝石としてのダイヤモンド

 以下では、「色」、「美しさ」、「鑑定方法」、「セッティング」など、宝石としてのダイヤモンドに着目して解説します。

ダイヤモンドの色

 純粋なダイヤモンドの結晶は無色透明です。しかし内部に含まれるほんの微量の不純物(窒素・ホウ素・水素)によって様々な色に変化することがあり、これらは「ファンシーカラーダイヤモンド」と呼ばれます。
 窒素が含まれるときは黄色や茶色、ホウ素が含まれるときは青を呈します。一般的に無色透明のものほど価値が高く、黄色や茶色など色のついたものは価値が落ちるとされますが、低級とされるイエロー・ダイヤモンドでも、「カナリー・イエロー」と呼ばれる綺麗な黄色がついていれば価値が高まります。
Wittelsbach Diamond  また、天然石でブルーやピンク、グリーンなどの色が付いたダイヤモンドは極めて稀少であり、時に無色のものよりも高価で取引されます。一例を挙げると、2008年、かつてスペイン国王が保有していたブルーダイヤモンド(Wittelsbach Diamond)は、クリスティーズ・オークションにおいて2,400万ドルの値が付き、2009年5月には、7.03カラットのブルーダイヤモンドが、カラット当たりでは過去最高額となる値段で落札されました(総額950万ドル/1カラット=135万ドル)。しかし同年12月、5カラットのピンクダイヤモンドが香港において108万ドルで落札され、あっという間に1カラットあたりの最高額記録を塗り替えてしまいました(1カラット=216万ドル)。
 なお、20世紀末頃から、黒色不透明の「ブラック・ダイヤモンド」(カルボナード/carbonadoとも呼ばれる)がアクセサリーとして評価されています。科学的な実証はまだですが、南アメリカやアフリカで発掘されるこのダイヤモンドは隕石や小惑星の衝突によって、およそ30億年前に生成されたのではないかと推測されています。 カラーダイヤモンドいろいろ  近年では放射線照射や高温高圧処理などの人工処理によって色付けしたダイヤモンドもあり、たとえば放射線を照射すると緑色に近くなり、また原子レベルでダイヤモンドの結晶構造に変形を加えると、茶色、ピンク、赤などに変色します。
 ただし何らかの人工処理が加えられている場合は鑑別書(ダイヤモンドと言えども、色つきの場合は「鑑定書」の対象外となり、他の色つき宝石同様、「鑑別書」しか発行されない)にその旨が記載されることになっています。詳細はダイヤモンドの鑑定書、及び宝石の鑑別書のをご参照下さい。

ダイヤモンドの美しさ

 ダイヤモンドの屈折率は2.42と高く、外部からダイヤモンドに入った光は内部で反射し、「シンチレーション」(表面に反射した光がチカチカとした輝いて見えるもの)、「ブリリアンシー」(ダイヤモンド内部に入った光が反射して戻り、強い白色のきらめきとして視認できるもの)、「ディスパーション」 (ダイヤモンド内部に入った光が内部で反射を繰り返し、プリズム効果によって虹色となったもの)などの効果を生み出して、ダイヤモンド特有の美しさを作り出します。
 詳細はダイヤモンドの鑑定書をご参照下さい。

ダイヤモンドの鑑定

 ダイヤモンドの品質を知るための指標としてGIA(アメリカ宝石学協会)が考案した「4C」(フォーシー)という基準があります。これは色(Color)、透明度(Clarity)、カラット(Carat)、カット(Cut)の4つを表します。
 欧米においてダイヤモンドの鑑定書を発行する団体としては、非営利のGIA(Gemological Institute of America)およびHRD(Diamond High Council)が最も有名で、その他ではニューヨークやアントワープに拠点を置く様々な営利団体があります。
 GIAはアメリカにおいて最初にダイヤモンドの鑑定書を発行した団体で、その厳格で一貫した鑑定基準に定評があります。HRDはベルギーのアントワープに拠点を置く鑑定団体です。
 詳細はダイヤモンドの鑑定書をご参照下さい。

ダイヤモンドのセッティング

 ダイヤモンドを指輪を始めとする宝飾品へとセッティングする際には、「プロング」(Prong)、「ベゼル」(Bezel)、そして「チャンネル」(Channel)という型があります。
ダイヤモンドのセッティング3種
  • プロングセッティング  プロングセッティング(写真左)は最も人気の高いセッティング方法で、ダイヤモンドをつなぎとめる6本のクロー(鉤爪)が特徴です。このセッティングはダイヤモンドに入射する光の量を最大にすると同時に、ダイヤモンドの大きさと光沢を引き立たせます。
  • ベゼルセッティング  ベゼルセッティング(写真中央)は、辺縁部が金属によって完全に囲まれたものです。このセッティングはイヤリング、ネックレス、ブレスレット、指輪などに多用されます。宝石の裏側は入射する光が最大になるようオープンだったりクローズだったりします。
  • チャンネルセッティング  チャンネルセッティング(写真右)は、宝石同士を分け隔てる金属が存在せず、宝石同士が寄り添い合って固定されているものです。ウェディングや何らかの記念日用の指輪などに多用されます。宝石を取り囲む外枠は概観を整えると同時に、宝石のガードル部の破損を防いでくれます。
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ダイヤモンドの動画

 以下でご紹介するのは、ダイヤモンドの写真ギャラリーです。
元動画は⇒こちら
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