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宝石の弱点とお手入れ

 宝石の弱点とされる、衝撃・汗・皮脂・超音波・硫黄・塩素・紫外線などへの対処法を解説します。

衝撃

 宝石として加工される鉱物は、硬度が7以上の比較的硬いものがほとんどです。これは、少なくとも石英を超えるような十分な硬度が無いと、他の物質で引っかいた際、容易に傷ついてしまうからです。
 しかし私たちが一般的に「硬度」と称しているものは「モース硬度」、すなわち「引っかきストレスに対してどの程度強いか?」という度合いであり、ハンマーで殴るような衝撃に対する強さ(へき開/cleavage)を指し示しているわけでありません。
 「どんな衝撃を加えてもびくともしない」という宝石は存在せず、全ての宝石には、外から加えられる衝撃に対する保護が必要です。例えば、最高硬度10を持つダイヤモンドでも、硬い壁などにぶつけてしまうと破損してしまう可能性が十分あります。
 宝石を踏んづけない、叩かないはもちろんのこと、指輪をしたまま激しい運動やスポーツをしない、部屋の大掃除をしない、硬い地面に落とさない、等の気遣いが重要となります。これは宝石をつなぎとめている爪(claw)やベゼル(bezel)などがゆがんで、ストーンが落下することを防止するという意味もあります。
 宝石を使用しないときは、専用のジュエリーボックス(宝石箱)にしまうなどして他の物とぶつからないように心がけましょう。
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汗・皮脂

 宝石や貴金属を身に着けていると、当然汗や皮脂と接触します。こうした体内からの分泌物が宝飾品の表面に付着しても、化学変化を起こすことはありませんが、外観を損なってしまいます。
 たとえばダイヤモンドは「親油性」といって油が付着しやすい性質を持っており、ダイヤの表面をベトベトと汚れた指で触ると、光の反射が低下し、それだけでブリリアンシー(輝き)が損なわれます。
 宝石や貴金属の汚れが目立ってきたら、まずは柔らかいフキンなどで乾拭きしてみましょう。もし汚れが頑固でなかなか取れないようでしたら、ぬるま湯に中性洗剤を数滴垂らし、表面の汚れを浮かせてからもう一度拭いてみます。水分が無くなるまでよく拭き取りますが、焦ってドライヤーなどは使用しないで下さい。
 また、汗や体液によって微量に溶けた金属が何らかのたんぱく質と結合して体の表面に付着すると、これを「異物」と判断した免疫系等が拒絶反応を示し、「かぶれ」や「炎症」といったいわゆる「金属アレルギー」の原因となることがあります。一般的にアレルギーを起こしやすい金属はニッケル、コバルト、クロムであり、アクセサリーとして加工される金、銀、プラチナは起こしにくいといわれています。こちらは宝石の弱点と言うよりは、人間の側の弱点ですが。なお、ジュエリークリーニング専用キットなどもたくさん売られています。
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超音波

 超音波洗浄とは、15~400kHzの超音波を用いて洗浄することです。超音波によって発生した微細な泡が、発生と破裂(キャビテーション)を繰り返し、その衝撃波によって汚れを除去するというメカニズムです。
 超音波によって発生する泡の温度は時に10,000度にも達し、また圧力は1平方cm当たり3.5トンに達することもありますが、泡自体が極めて小さいため、せいぜい「目では見えない細かな汚れを落とす」程度の力しかありません。
 宝石に「含浸処理」(がんしんしょり)や「充填処理」(じゅうてんしょり)が施されている場合は、ほとんどの場合超音波洗浄が厳禁ですので、注意が必要です。含浸処理とは、ワックス・オイル・樹脂・着色液などを宝石にしみこませることで光沢や透明度、あるいは色を変化させる人工処理方法で、また充填処理とは、穴や傷があった場合、ガラスなどを用いて修復する人工処理方法を指します。
 こうした人工処理が施された宝石を超音波洗浄をかけると、宝石の細かい穴にしみこんだ人工物がそぎ落とされてしまうのです。特にエメラルドルビーパールオパールトパーズターコイズタンザナイトなど、多孔性(porous)のジュエリーには注意が必要です。また、ストーンを接着剤などで固定した安価な宝飾品も超音波にかけないほうが無難でしょう。
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硫黄

 硫黄とが反応すると「硫化銀」(りゅうかぎん/Ag2S)という化合物に変化し、肉眼では黒ずんで見えます。
 銀製品表面に皮膜と言う形で付着した硫化銀を「いぶし銀」として愛好する人もいますが、一般的には好まれません。硫黄は温泉、空気中(自動車の排ガスなどの中に硫化水素という形で)、ゴム製品、パーマ液、界面活性剤、シャンプー、接着剤など様々なものに含まれていますので、変色を望まない場合は特にこうした物と銀製品との接触を避けなければなりません。
 プラチナは、100%の純度を持っている場合は硫黄と反応しませんが、通常は割り金(他の金属と混ぜて強度を高めた状態)という形で宝飾品に加工されていますのでやはり注意が必要です。
 たとえばイエローゴールドは、金75%、残り25%が銀と銅等量の合金であり、グリーンゴールドは金75%で残り25%が銀の合金です。このように金製品(プラチナ製品)と言えども、幾分かの銀が含まれていますので変色を望まない場合は硫黄との接触を避けねばなりません。
 宝石を使用しないときは、専用のジュエリーボックス(宝石箱)にしまうなどして他の物質と接触することを避けましょう。
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塩素

 は塩素と化学反応を起こして「塩化銀」(AgCl)に変化し、銀製品表面に薄くて茶色い皮膜を作ります。またこの皮膜は太陽光に含まれる紫外線にあたると被膜が黒く変化するというやっかいな性質をもっています。
 塩素はカビ取り剤や漂白剤の中に含まれていますので、ポケットの中にシルバーアクセサリーを入れたまま洗濯機などにかけてしまうと、上記反応を通してせっかくの銀製品が変色してしまうことがありますので注意が必要です。
 宝石を使用しないときは、専用のジュエリーボックス(宝石箱)にしまうなどして他の物質と接触することを避けましょう。
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紫外線

 銀の表面に皮膜として付着した「塩化銀」(AgCl)が紫外線に当たると、茶色から黒に変色してしまいます。
 またハックマナイトというソーダライトの一種は、紫外線を吸収すると変色してしまいます。ただしハックマナイトに関しては時間が経過すると元に戻るため、厳密な意味で有害とは言えないかもしれません。
 宝石を使用しないときは、専用のジュエリーボックス(宝石箱)にしまうなどして日光とが当たらないようにしましょう。
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