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イヤリング・ピアスのすべて

 イヤリングやピアスの歴史や種類、およびピアスホールの開け方からゲージ数に至るまでを解説します。

イヤリング・ピアスとは?

 イヤリングとは、耳のどこかに穴を空けたり、クリップによって耳介(じかい=耳のひらひらした部分)に宝飾品を取り付けたものです。
 かつては女性だけのアクセサリーでしたが、近年ではアメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど世界各国で男女共通の装身具となっています。
 通常は耳たぶに装着しますが、イヤリングを取り付ける位置によって様々なバリエーションがあります。ただ単に「ピアス」(piercing)と言う場合は、耳たぶ部分に穴を空けてアクセサリーを貫通させることです。
 イヤリングの素材は多様で、金属、プラスチック、ガラス、貴石、ビーズ、木製品などがあります。
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イヤリング・ピアスの歴史

 イヤリングの中でも、耳に穴を空ける「ピアス」は、極めて古い歴史を持つ装身方法です。
 古いものでは、古代ペルシアのペルセポリス遺跡において、ピアスをした男性の遺骨が発見されています。また、現存するペルシア帝国時代の壁画に彫られた兵士たちの姿には、男性がピアスをしている姿がはっきりと見て取れます。
 船乗りの間では、ピアスをしていることは世界中を航海したことや、赤道を渡ったことがあることを意味しました。また、万が一海難事故などで命を落とした場合に備え、金のピアスをするという風習もあったそうです。これは「金のピアスをお金に換えて、自分の為に人並みの葬式を出してほしい」という意味だったようです。
 日本においては、北海道の先住民族であるアイヌ民族が真鍮製のピアスを装着することが風習としてありましたが、19世紀の終わりごろ、明治政府から禁止令が出されて風化してしまいました。
 インドにおいては宗教儀式の一環として、現在においても5歳を迎える前の少年がピアス穴を空けるという風習があります。早い場合は、生後数日の赤ん坊に対して行うこともあるようです。同様の風習はネパール、スリランカ、ラオスなどでも見られますが、こちらの場合は青年期を迎えてから穴を空けるという違いがあります。なお、片方の耳に空けるピアス穴は1つだけと定められているのは、宗教上不謹慎であるとの考えに基づいています。
 1900年代初頭のアメリカにおいてはピアスが一般的でしたが、クリップ式のイヤリングが登場したことにより、人気は凋落(ちょうらく)します。代表的なクリップ式イヤリング、及びピアス穴を空けないイヤリング(ノンピアス・イヤリング/non-pierced earrings)の種類は以下です。
クリップ式とノンピアスのイヤリング
  • クリップ式イヤリング クリップ式イヤリング(clip-on earrings)は、弾性力をもったクリップで耳を挟みつけるタイプのイヤリング。ノンピアス・イヤリングの中では最も最初に誕生したタイプだが、人によっては痛すぎて長時間付けていられないという難点もある。
  • マグネット式イヤリング マグネット式イヤリング(magnetic earrings)は、二つの磁石で耳たぶを挟み、磁力でイヤリングを固定するタイプ。
  • のり付け式イヤリング のり付け式イヤリング(stick-on earrings)は、粘着性のある接着面を耳たぶにつけることで固定するタイプ。
  • スプリング式イヤリング スプリング式イヤリング(spring hoop earrings)は、指で押すとへこみ、指を離すと元の位置に戻るスプリングで耳たぶを挟むタイプ。
  • 引っ掛け式イヤリング 引っ掛け式イヤリング(ear hook earrings)は、耳介(耳のひらひらした部分)に巨大な釣り針のようなフックを引っ掛けてイヤリングをぶら下げるタイプ。
  • ねじ式イヤリング ねじ式イヤリング(screw earrings)は、ねじ式の固定部を微調整することで耳たぶに装着するタイプ。スプリング式に比べて、耳に対する圧力を微調整できるという特徴がある。
 上記ノンピアス・イヤリングの登場によって下火になったピアス人気が回復するには、1960年代、ヒッピーとゲイカルチャーの隆盛を待たねばなりませんでした。
 当時は、お医者さんにピアス穴を空けてもらうという一般常識が無かったため、ピアシングはもっぱら自宅で行われていたようです。この様子は、オリビアニュートンジョンが主演している「Grease」(1978)という映画の中でも見て取れます。
 1980年代になると、パンクロックアーティストがこぞってピアスをしていたことから、男性の間でピアスをするという文化が徐々に確立していきました。当時、ピアスを愛好していた有名人の例としては、イギリスのジョージ・マイケル(ワム!のボーカル)やアメリカのMr.T(特攻野郎Aチームのモヒカン)などがいます。
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イヤリング・ピアス穴の種類

 耳に複数の穴を空ける「マルチピアシング」は、1970年頃に誕生しましたが、今日では更に進化して、以下の様なバリエーションがあります。
マルチピアシングの種類
  • 1=へリックス(helix)
  • 2=インダストリアル(industrial)
  • 3=ルック(rook)
  • 4=ダイス(daith)
  • 5=トラガス(tragus)
  • 6=スナグ(snug)
  • 7=カンチ(conch)
  • 8=アンチトラガス(anti-tragus)
  • 9=ローブ(lobe)
マルチピアシングの種類
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ピアス穴の空け方

 ピアスを通すための穴、通称「「ピアスホール」を空けるということは、体に穴を空けることにほかなりません。しかし体に穴を空けるという行為は、日本においては医療行為に相当するため、医師免許を持たないものが他人に対してピアシング(ピアスホールを空けること)を行うと、「医師法違反」と言う犯罪になってしまいます。
 一般的に、医師免許を持たないピアッシングスタジオでの穴あけも法律違反のはずですが、なぜか黙認されているのが現状のようです。しかし過去には悪質なピアッシングスタジオの経営者が逮捕された事例もありますので、本来は法律違反であるという認識をもっておきましょう。
 ちなみに刺青(タトゥー)に関しては、各都道府県で指定されている「青少年育成保護条例」によって、18歳未満の青少年への施術が禁止されています。しかしピアスはこの条例の適用外ですので、18歳未満の少年少女がピアスホールを空けること自体が、法に抵触することはありません。
 さて、ピアスホールを空ける際には、大きく分けて2つの方法があります。1つは「医療機関に頼る方法」、そしてもう1つは「自力で行う方法」です。

医療機関でピアスホールを空ける

 ピアスホールを受け付けてくれる医療機関としては、主に皮膚科や美容外科があります。メリットは、しっかりと殺菌した医療器具を用い、衛生管理とアフターケアもしっかりしているという点です。
 耳たぶのほかボディピアス用のピアスホールを受け付けている病院もあり、穴を空ける場所によっては局所麻酔もしてくれたりします。
 料金は病院によってまちまちですが、初診料を含めて10,000弱程度のところが多いようです(耳たぶの場合)。しかし、市販のピアッサー(ピアスホールを空ける専用の道具)を安易に用いる医療機関も多いようなので、事前に病院の評判や施術方法、そして料金をご自分で調査することは必須です。なお、ピアスホール空けは保険適用外ですので、全額自己負担となります。

自力でピアス

 医療機関を頼らず、自力でピアスホールを空けるという選択肢もあります。この場合、他人に施術を施す訳ではないので、医師法には抵触しません。ただし、医学的知識が無い素人が行うと、衛生面で問題が発生することがあります。例えば、穴を空けた部分に雑菌が入って化膿したり、穴あけ道具の使いまわしによって血液経由の感染症(肝炎やHIV)が広まったり、金属アレルギーを発症したりなどです。
 穴空けに使う道具としては、画びょうや安全ピンなど身近なもので強引に穴を空けてしまう猛者(もさ)もいるようですが、自力でピアスホールを空ける際は「ピアッサー」など市販の専用器具を用いる場合が多いようです。
 市販のピアッサーを用いると、比較的簡単に耳たぶに穴を空けてファーストピアスを装着することができます。ファーストピアスとは、開いた穴の周囲に新しい皮膚が出来るまでの間装着するピアスのことで、料金は1,000~1,500円程度、ほとんど痛みはなく、1~2秒で終わります。使い捨てですので、血液経由の感染症予防の為、二次使用や使い回しは厳禁です。なお両耳空ける場合は、当然ピアッサーは2個必要となります。
 ファーストピアスの種類としては、アレルギーを起こしにくいチタンやステンレス、樹脂などがよく用いられます。ファーストピアスは、新しく空けた穴の周囲に新しい皮膚が出来るまでの4~6週間、ずっとはめっぱなしになります。以下は一般的なピアッサーの使い方、及びピアスゲージ一覧表(耳に空ける穴の大きさ)です。
ピアス穴の空け方
 耳タブのピアッシング(純チタン製) 元動画は⇒こちら
 耳タブのピアッシング(透明タイプ) 元動画は⇒こちら
ピアスゲージ一覧表
ゲージ数と針の太さ一覧表
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セカンドピアスの選び方

 空けた穴を安定させるために装着していたファーストピアスは、およそ4~6週間で外せる状態になります。外す目安としては、耳たぶ周辺の炎症反応(痛み・赤み・腫れ)がなくなり、ポスト(耳を貫通している軸の部分)を動かしても痛みが生じないことです。これは貫通した穴の内側に新しい皮膚ができたことを意味しています。
 ファーストピアスが外れたら、いよいよ本格的にファッションと穴の安定を目的とした「セカンドピアス」を装着します。選ぶ際の基準としては、長時間身に着けていても負担にならないこと、アレルギーを起こさないこと、です。
 一度出来上がったピアスホールも、長期間放置しておくと穴がふさがってしまうことがあります。ですから、穴がふさがらないようにある一定期間ピアスを装着し続ける必要があり、これはセカンドピアスの重要な役割の1つです。また、一般的にアレルギーを起こしやすい金属はニッケル、コバルト、クロムであり、逆に金、銀、プラチナ、チタン、樹脂などは起こしにくいといわれていますので、素材を選ぶ際の参考になるでしょう。
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