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宝石のカット

 宝石の代表的なカット方法であるファセットカットとカボションカットについてイラスト付きで解説します。

ファセットカット

 ファセットカットとは、「ファセット」(英語でfacet=切子面・小平面の意味)という言葉が示す通り、いくつもの小さな面が幾何学的に組み合わされたカッティング方法で、宝石の持つ透明度を最大限に生かす場合に用いられます。必然的に、透明度と光の屈折率が高い宝石に多く用いられますが、大別してブリリアントカットとステップカットがあります。

ブリリアント・カット

 ブリリアントカットとは、1919年に宝石職人マルセル・トルコフスキー(Marcel Tolkowsky)が開発したカッティング方法で、宝石の透明度と輝きを最大限に生かすよう計算されています。 主にダイヤモンドに対して採用され、宝石の形状に合わせていくつかのサブ・カテゴリに分類されます。

形状によるブリリアント・カットの分類

ブリリアントカット各種一覧図
  • ラウンド・ブリリアントカット ラウンド・ブリリアントカット(round brilliant cut)とは上面が円形の20世紀を代表するカットで、ダイヤモンドの基準である「4C」の一つにもなっています。
  • オーバル・ブリリアントカット オーバル・ブリリアントカット(oval brilliant cut)とは上面が楕円形で、ラウンドよりも研磨によって失う原石部分が少なくて済むことがあります。
  • オールドマイン・ブリリアントカット オールドマイン・ブリリアントカット(old mine brilliant cut)とは上面が方形のカット方法で、17世紀頃から存在するカット方法です。ペルッシーカットとも呼ばれます。
  • マルキーズ・ブリリアントカット マルキーズ・ブリリアントカット(marquise brilliant cut)とはラグビーボールのように両端がとがった形で、ブリリアントカットの変種です。宝石を実際のカラットよりも大きく見せることが出来ます。
  • ハート・ブリリアントカット ハート・ブリリアントカット(heart brilliant cut)とはハート型で通常は65面からなり、婚約や結婚など愛情を表現するシチュエーションで好まれます。
  • ペアシェイプ・ブリリアントカット ペアシェイプ・ブリリアントカット(pear-shaped brilliant cut)とは洋ナシ型で、別名「ドロップカット」(ドロップは”雫”の意味)とも呼ばれるブリリアントカットの変種の1つです。

ブリリアント・カットの名称

 以下は、ブリリアントカットを構成する小さな切子面の各部名称です。
 基本はテーブル1+スターファセット8+ベゼルファセット8+アッパーガードルファセット16+パビリオンファセット8+ロウアーガードルファセット16+キュレット1=58面体です。その他には82面体、及び144面体があります。また、近年では側面のガードル部分にもカットが入れられることが多く、たいていは32 or 64 or 80 or 96面で構成されますが、この面は総面数にカウントされません。
上部のクラウン部
ブリリアント・カットの上部クラウン部・各部名称
  • テーブル テーブル(Table)とは上面で最も大きな面積を占める平らな部分です。
  • スターファセット スターファセット(Star Facet)とはテーブルに隣接する形で星型に広がる8つの小面で、カイトファセット(Kite Facet=凧の形の小面)とも呼ばれます。
  • ベゼルファセット ベゼルファセット(Bezel Facet)とはスターファセットとアッパーガードルファセットとを結ぶ面です。
  • アッパーガードルファセット アッパーガードルファセット(Upper Girdle Facet)とはガードルとベゼルファセットを結ぶ面です。
側面と下部のパビリオン部
ブリリアント・カットの側下部パビリオン部・各部名称
  • ガードル ガードル(Girdle)とは宝石の上面と下面の境界線となる部分です。
  • パビリオンファセット パビリオンファセット(Pavilion Facet)とはキュレットとロウアーガードルファセットとを結ぶ面です。
  • ロウアーガードルファセット ロウアーガードルファセット(Lower Girdle Facet)とはガードルとパビリオンファセットとを結ぶ面です。
  • キュレット キュレット(Culet)とは最下部に位置し、全ての面が終結する1点です。

ステップ・カット(Step Cut)

 ステップカットとは、宝石の外周が正方形やその他の四角形に型どられており、切子面(ファセット)が側面のガードルに対して平行に削られているものを指します。しばしばトラップカットとも呼ばれます。
 ステップカットは、近年ではブリリアントカットの後塵を拝していますが、アールデコ時代(ヨーロッパおよびアメリカ・ニューヨークを中心に1910年代半ばから1930年代にかけて流行、発展した装飾の一傾向で、幾何学図形をモチーフにした記号的表現や、原色による対比表現などの特徴を持つ)には大変な人気を誇っていたカッティングです。 ステップ・カットの種類一覧図

エメラルドカット

 破損防止の為に角を削り取られて8角形になったステップカットは、特にエメラルドカットと呼ばれますが、これはこのカッティング方法がエメラルドに対して頻繁に用いられたことに由来します。上部のクラウン部も、下部のパビリオン部も、ブリリアントカットほどの厚みを持たないため、輝きという点においては見劣りしますが、テーブル面が広いことから、逆に宝石のクラリティ(透明度)を引き立たせるカッティング方法ともいえます。

バゲットカット

 バゲットカットはステップカットの内で最も有名なものですが(baguetteはフランス語で棒状の固焼きフランスパンの意味)、今日、バゲットカットを施された宝石は、宝飾品の中央に配置されたブリリアントカットのメインストーンの添え物として、脇に配置されることが多いようです。

スクウェアステップカット

 スクウェアステップカットは、角が削り取られていない点が特徴で、アンティークジュエリーによく見られるデザインです。同じく四角いデザインのプリンセスカットと似ている点もありますが、スクウェアステップカットの特徴であるシンプルなファセットで見分けが付きます。キューレットはあったりなかったり、まちまちです。

ミックス・カット(Mixed Cut)

 ミックスカットとは、変種を含むブリリアントカット、及びステップカットの両方の特性を備えたカッティング方法を指し、歩留まりの維持しつつ、ブリリアントカットの視覚効果とステップカットのデザイン性を組み合わせることを目的としています。通常は上部のクラウン部にブリリアントカットが施され、下部のパビリオン部にはステップカットが施されます。
 ミックスカットが最初に登場したのは1960年代ですので、比較的最近誕生したカッティングといってよいでしょう。ミックスカットは商業的に大成功を収めており、ラウンドブリリアントカットが維持していた人気の牙城を崩すほどの勢いを持ちつつあります。 ミックスカットの種類一覧図

バリオンカット

 ミックスカットの内、最初に登場したのはバリオンカットで、1971年のことでした。南アフリカのカット師・バジル・ウォーターメイヤー氏が考案したこのカッティングは、彼の妻であるマリオンにちなんで名づけられ、研磨されたガードル(側面部)をもつ8角形、もしくは四角形のデザインを特徴としています。総ファセット数は、キューレットを除いてクラウン部に25、パビリオン部に29、そしてガードル部に8のトータル62です。バリオンカットの特徴は、パビリオン部に形成されたパビリオンファセット、及び三日月形のファセットによって、上部のテーブルファセットに浮かび上がる十字模様です。

レイディエントカット

 バリオンカットと似通ったカッティングとしては、レイディエントカットがありますが、こちらの総ファセット数が70です。バリオンカットにもレイディエントカットにも非常にたくさんの変種があり、各宝石には大同小異のアレンジが施されています。

プリンセスカット

 最も成功を収めたミックスカットとしては、イギリス・ロンドンのA・ネイジーが1960年に世に送り出したプリンセスカットが挙げられます。プリンセスカットは当初、平らな紅柱石の為に考案されたものでしたが、人気の上昇に伴い、AGS(American Gem Society)を始めとする団体は、 ラウンドブリリアントカットに匹敵するほどの厳密な評価基準を設けたほどです。プリンセスカットの絶大な人気の秘密は、他のミックスカットと比較して宝石の輝きを引き立たせるという点の他に、カットによって失われる原石を最小限にとどめることが出来るという点にあります。

フランダースカット

 その他のミックスカットとしては、角を削り落としたスクウェアカットの変種とも言えるフランダースカットなどがあります。
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カボションカット

 カボションカットとは、宝石を半球形に磨きあげることで、小切子面から構成されるファセットカット(facet cut)に対峙するカッティング方法です。ファセットカットが透明な宝石に対して採用されるのに対し、カボションカットは不透明な宝石に適用され、通常は、頂上が凸面で底部が平らになります。またカボションカットは、砂塵に含まれる石英によって傷が付きやすい、モース硬度7以下の宝石に対して多く用いられますが、これはカボションカットが表面の引っかき傷などを目立たなくするという特性を持っているからです。 カボションカットの種類一覧図  サファイアやクリソベリルなど、特殊効果の出やすい宝石に対してもカボションカットが採用されますが、これはファセットカットにしてしまうとせっかくの効果(スター効果やキャッツアイ効果など)が肉眼で確認できなくなってしまうからです。カボションカットの一般的な形状は長円形ですが、理由としては、円形に比べて微小な非対称性に気づきにくくなること、及び、単純に長円形ドームが造形的に美しいという点が挙げられます。
 研磨されるドームが表だけのものがシングルカボションカット、表と裏の両面に付いたものがダブルカボションカットと呼ばれ、その他には、ローカボションカット、ハイカボションカット、ホローカボションカットなどのバリエーションがあります。
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